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【ファイナル】1987年ファイナル レイカーズVSセルティックス 全6試合

第1戦

このファイナルは80年代の直接対決では唯一レイカーズがホームコートアドバンテージを持ったシリーズとなった。多くの著名人が訪れたグレート・ウェスタン・フォーラムで始まった第1戦、疲労困憊のセルティックスにレイカーズの"ショータイム"オフェンスが襲い掛かった。レイカーズは前半だけで速攻による得点を35点も記録し、21点リードで前半を折り返した。その後もセルティックスは追いつくことができず、126-113でレイカーズが勝利した。マジック・ジョンソンは29得点8リバウンド13アシスト、ジェームス・ウォージーは33得点9リバウンドを記録した。

第2戦

セルティックスのK.C.ジョーンズHCはマジックを止めることこそ勝利への道とし、ダニー・エインジにマジックの徹底マークを命じた。最初この指示は功を奏したかに見えたが、しかしマジックへの集中マークはマイケル・クーパーを自由にすることを意味していた。レイカーズが7点リードで第2Qに入ると、ここからクーパーを中心にレイカーズの猛攻が始まり、セルティックスが10得点をあげる間にレイカーズは20得点を記録。普段ディフェンスで活躍するクーパーは、この20得点全てにシュートないしアシストで絡む活躍を見せ、また放ったスリーポイントシュート7本のうち6本を決め、スリーポイントシュート成功数のプレーオフ新記録を作った。さらにマジックは第2Qだけで8アシストを決め、1クォーターにおけるアシストのファイナル記録を更新した。マジックは22得点20アシスト、カリーム・アブドゥル=ジャバーは23得点を記録し、144-122でレイカーズがセルティックスを粉砕した。

第3戦

ファイナル第3戦目を前にシリーズの流れは早くもレイカーズに傾いているかに見えたが、"魔物"が棲むと言われるボストン・ガーデンで、レイカーズはセルティックスから手痛いカウンターパンチを浴びる羽目となる。

マジックとジャバーに襲い掛かった魔物とは、グレッグ・カイトという聞き慣れない選手だった。レギュラーシーズンの平均出場が10分強の彼は、ロバート・パリッシュがファウルトラブルに陥った第1Q後半から試合に参加し、20分間プレイした。この間カイトは9つのリバウンドを奪い、さらにマジックのレイアップをブロック、ジャバーに対しても激しいディフェンスで応じ、見事に封じ込めて見せた。得点こそなかったがこの日はバードが30得点、デニス・ジョンソンが26得点を記録していたため、カイトはディフェンスだけでも十分にセルティックスに貢献した形となった。カイトが出場した時間帯の第2QにセルティックスはFG17/21の猛攻を加え、前半のうちに試合を決めてしまった。また第2戦でパリッシュの足の上に着地したことにより、痛めていた足首をさらに悪化させてしまったケビン・マクヘイルは、足を引き摺りながらもコートに立ち続け、21得点10リバウンドを記録し、さらにディフェンスではレイカーズのウォージーを13得点3リバウンドに抑えるなど、攻守両面で活躍。チーム全体が疲弊し切った状態の中で一致団結したセルティックスが109-103でレイカーズを降し、シリーズ初勝利をあげた。

第4戦

第3戦を勝利した後、バードは「この試合はシリーズの中で最も重要な試合だった。もし負けていたら第4戦前に立ち直れなかったかもしれない。今後は楽になるだろう」と彼にしては珍しく楽観的なコメントを残した。

第4戦はバードの予測通りセルティックスペースで進み、前半を終わってセルティックスが16点のリードを奪っていた。しかし後半になるとレイカーズがじわじわと追い上げを見せ、第4Q残り1分30秒にはマイケル・クーパーのスリーポイントシュート、さらにはウォージーが1on1からマクヘイルとパリッシュのダブルチームを受けながらもジャンプショットを沈め、ついに103-102のその差1点にまで迫った。タイムアウト明け後のバードのシュートは外れ、レイカーズに逆転のチャンスが訪れた。ボールを運ぶマジックはクーパーにポストプレイの指示を出したが、これはフェイクでクーパーはすぐにジャバーのスクリーンに回り、フリーになったジャバーにマジックの絶妙なパスが通った。ジャバーの右手でバスケットに叩き込まれたアリウープダンクはついにレイカーズに逆転をもたらし、残り29秒の土壇場で104-103とレイカーズが1点のリードを奪った。しかしバードも黙ってはおらず、タイムアウト後のオフェンスでウォージーのディフェンスを振り切った上で見事にスリーポイントシュートを決め、残り12秒で106-104と再びリードを奪い返した。歓喜に沸く館内でレイカーズは伝家の宝刀、ジャバーのスカイフックで同点を狙った。ボールは無情にもリムに弾かれたが、マクヘイルのファウルがあり、ジャバーに2本のフリースローが与えられた。セルティックスファンの懸命な妨害の中でもジャバーは1本目のフリースローを沈め、点差の1点を着実に縮めた。次を決めれば同点に並ぶが、しかしジャバーは2投目をミス。弾かれたボールを巡ってマクヘイル、パリッシュ、そしてレイカーズのマイカル・トンプソンが争ったが、ボールは彼らの手の上を泳いだ上でラインを割った。ボールの行方一つで試合とシリーズの行方が変わる時間帯、マクヘイルはトンプソンのファウルがあったと必死でアピールしたが、審判の判断はセルティックスによるアウト・オブ・バウンズだった。ウォージーからのインバウンドパスを受け取ったのはマジック。スリーポイントラインでマクヘイルと対峙したマジックは、トップに向かってドライブを開始。マジックの前に立ちはだかったのは"史上最高のフロントライン"とまで呼ばれたマクヘイルとパリッシュ、そしてバード。彼らに囲まれる直前に床から飛び上がったマジックは、パリッシュとマクヘイルの腕を掻い潜ってシュートを放った。それはジャバーから教えを受けた彼の新しい武器であるフックシュートだった。マジックの手から離れたボールは綺麗な弧を描いてボールに吸い込まれ、107-105とレイカーズが逆転。再度の逆転を狙ったバードのスリーポイントシュートは外れ、レイカーズが劇的な逆転勝利を果たした。

試合後、記者のインタビューを受けるバードは「スカイフックで負けることはあっても、マジックのフックシュートで負けるとは思っても見なかった」とコメントしている。一方のマジックは勝利の余韻に浸るロッカールームで、彼が決めたフックシュートを「マイ・ジュニア・ジュニア・ジュニア・スカイフック」と名づけていたが、やや長すぎるため、ベビーフックという名で、マジックの生涯最高のシュートとして世に知られるようになる。

第5戦

試合前、すでに氷で冷やされたシャンパンを用意しているレイカーズを前に、バードは「彼らが祝いたくても、寄木細工の上では絶対に祝わせない」とチームメイトの前で誓った。このバードの言葉に奮起したダニー・エインジは、セルティックスベンチからの「お前のスリーは必要ない」という声にも耳を貸さずにスリーポイントシュートを打ち続け、6本中5本のスリーポイントシュートを成功させ、"Ainge range"の異名を与えられた。レイカーズはマジックが29得点8リバウンド12アシストと活躍するも援護を得られず、セルティックスが123-108で快勝し、崖っぷちで踏みとどまった。しかしこの試合が、80年代セルティックスにとって最後のファイナルでの勝利となった。

第6戦

フォーラムに戻った第6戦。後がないセルティックスは序盤からペースを握り、前半を56-51と5点リードして折り返した。前半のマジックは僅か4得点に終わり、一方この日ゲームハイの33得点を記録するデニス・ジョンソンは、前半だけで18得点をあげていた。

この日レイカーズにはある外見的な大きな変化があった。まもなく40歳を迎えるジャバーが、薄くなっていた頭髪を丸め、スキンヘッドで現れたのである。そして後半のレイカーズは、ジャバーの汗で濡れた頭部のように輝いた。後半開始から攻勢に出たレイカーズは一気に点差を詰めると、マクヘイルのパスアウトに敏感に反応したウォージーがカット。さらにラインを越えようとするボールに向かってダイブし、すでに走り出していたマジックにボールを押し戻した。マジックは誰の妨害も受けることなくセルティックスのゴールに達し、マジックとウォージーにしか反応できない、ショータイム・バスケットの真骨頂と言える速攻をダンクで締めくくった。このダンクでレイカーズが57-56と逆転を果たしが、さらにこの速攻がセルティックスに引導を渡したといえる。以後レイカーズは一度も追い付かれることなく、106-103で勝利し、1年ぶり10回目の優勝を決めたのである。

ジャバーは32得点6リバウンド4ブロック、ウォージーは22得点、マイカル・トンプソンは15得点9リバウンドを記録。そして第4戦でベビーフックを決め、この日も16得点8リバウンド19アシストという堂々たる数字を残したマジック・ジョンソンが、自身3度目となるファイナルMVPに選ばれた。

80年代に入って4度目の優勝を果たし、仇敵セルティックスにもこれで80年代はファイナル2勝1敗と勝ち越し、我が世の春を謳歌していたレイカーズだが、しかしパット・ライリーHCには大きな野望があった。恒例のシャンパンファイトも終わり、ほろ酔い状態で記者会見に臨んだライリーは、記者の前でファイナル連覇を宣言してしまったのである。酒の席の後ということもあり、まだ「酔った後の勢い」で許された発言だったが、後日の凱旋パレードのセレモニーでも、しらふのライリーはまたもや連覇宣言をしてしまった。最後にNBAで連覇を果たしたのは1969年のセルティックス。以後70年代からこの年にかけて、連覇をやってのけたチームはおらず、いつしかNBAでは連覇を果たすのは不可能とさえ言われるようになっていた。"ショータイム"レイカーズにとって、この優勝は新たな挑戦への始まりだった。
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