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【ファイナル】1998年 ブルズVSジャズ 全6試合
第1戦
レギュラーシーズンの勝率で並んでいる両チームだったが、シーズン中の直接対決では2戦2勝でジャズが上回っているため、ホームコートアドバンテージはジャズに渡った。さらにカンファレンス決勝を第7戦まで戦い、間を置かずしてファイナルに突入するブルズに対し、カンファレンス決勝をスイープで決したジャズは10日間の休養を取っており、事前予想ではジャズが有利と言われていた。
デルタ・センターで行われた第1戦の序盤は接戦となったが、試合が進むに連れて徐々に休養をたっぷりとったジャズのペースとなり、ブルズがジャズを追いかける状態が続き、第4Qを迎える時点でジャズが8点のリードを奪った。しかし第4Qから追い上げを見せたブルズはスコッティ・ピッペンの3Pシュートで同点に追い付く。ジャズもジョン・ストックトンとカール・マローンのピック&ロールでブルズを突き放すが、ジョーダンのパスを受けたルーク・ロングリーが土壇場で試合を振り出しに戻すレイアップを決め、第1戦はオーバータイムに持ち込まれた。オーバータイムは試合終盤に追い付き勢いに乗るブルズが優位と思われたが、残り9.3秒でストックトンのランニングジャンパーが決まり、86-82でブルズを突き放した。ブルズはトニー・クーコッチの3Pシュートで最後の足掻きを見せるも、最後はストックトンがフリースローを2本とも決め、88-85でジャズが重要な第1戦を勝利した。
ジャズはストックトンが24得点8アシスト、マローンが21得点14リバウンド、バイロン・ラッセルが15得点を記録。ブルズはマイケル・ジョーダンが33得点、ピッペンが21得点8リバウンドを記録した。この試合はオーバータイムまでもつれたにも関わらず、両チームとも90得点を超えないロースコアゲームとなり、シリーズは以後も100得点を超えることのないロースコアゲームが展開されることになる。
第2戦
苦しいファイナルを予想されたブルズは事実大事な第1戦を落としたが、ブルズはファイナル経験に関しては当時のどのチームよりも豊富だった。ブルズは初戦の惜敗を引き摺ることなく第2戦では体勢を立て直し、試合を優位に進めて第3Qには61-53とリードを奪った。しかしここからジャズのジェフ・ホーナセックによる猛反撃が始まり、ホーナセックの放つシュートが次々とブルズゴールに襲い掛かった。第3Qが終わった時点でブルズのリードはなくなり、73-70とジャズの3点リードに変わっていた。ブルズは第4Q最初の7分間でジャズに1本のフィールドゴールも許すことなく11-1の猛攻を見せ、81-74とリードを奪い返すが、ジャズも粘りを見せ、残り1分46秒にはホーナセックの3Pシュートが決まり、86-85と再びジャズがリードを奪った。ジャズが優勝に大きく近づく2連勝を飾るかに見えたが、ストックトンのパスミスをクーコッチがスティールし、クーコッチのロングパスを受けたスティーブ・カーが3Pシュートを放った。これは外れたがカーは自らリバウンドを拾い、カーからのパスを受けたジョーダンがファウルを受けながらもシュートを決め、ブルズに再度のリードをもたらした。結局このプレイが決め手となり、ブルズがジャズのホームコートアドバンテージを無効とする93-88の勝利を収めた。
ブルズはジョーダンが37得点、ピッペンが21得点、クーコッチが13得点9リバウンドを記録。ジャズはホーナセックが20得点と活躍したが、マローンはFG成功率3割台に終わり、ストックトンも9得点7アシストとやや低調だった。
第3戦
ジャズにとって第3戦は大変に不名誉な試合となった。
この日のジャズを引っ張ったのはここまでFG成功率が3割台と不振に陥っていたマローンだった。マローンは試合序盤に8連続得点を決めるなどブルズに襲い掛かったが、ブルズはマローンに対して敵愾心丸出しのデニス・ロッドマン(ロドマン、このファイナルではベンチスタードだった)を当てることで対抗すると、そしてマローンのチームメイトたちをシャットダウンした。ジャズにとっては悪夢のような時間だった。この日96-54の歴史的惨敗を喫したジャズは1954年にショットクロックが導入されて以後の、レギュラー、ポスト両シーズンにおける歴代最低得点をたたき出してしまったのである。ほか、ファイナルでの歴代最低フィールドゴール数21本、また後半の23得点はファイナルでのハーフ歴代最低得点となった。あまりにも悲惨な数字に、試合の記者会見でジャズのジェリー・スローンHCは、スタッツシートに目をやりながら「これが本当にスコア?」と呟いた。
大勝したブルズはジョーダンが24得点、クーコッチが16得点するほか、出場した全員が得点した。ジャズはマローンが22得点と孤軍奮闘したが、二桁得点したのは彼一人だった。ブルズの歴史的大勝となったこの日の最大の立役者はピッペンであり、彼のディフェンスが至る所でジャズを苦しめる"ワンマンレスキュー"ぶりを発揮した。
第4戦
過去2シーズンに比べると、このシーズンのデニス・ロッドマンは決して充実していなかった。レギュラーシーズンから先発の座をトニー・クーコッチと争うようになり、そしてプレーオフに入るとほぼその座をクーコッチに明け渡していたのである。そしてファイナルの第3戦の後にロッドマンはチームから離れてデトロイトで行われたプロレスイベントに参加していたことが物議を醸すなど、ファイナルに集中していないように見られた。
そしてブルズの2勝1敗で迎えた第4戦。ブルズが勝利して優勝に向けて決定的なリードを奪うか、ジャズが勝利してシリーズを振り出しに戻すかの重要な一戦、残り1分をきったところで、両チームの命運はこのロッドマンに委ねられた。
第3戦を大敗したジャズは第4戦では生まれ変わり、この日は一進一退の攻防が繰り広げられた。そして両者譲らぬまま試合終盤となり、79-77のブルズ2点リードで迎えた残り59.8秒、ロッドマンに2本のフリースローが与えられたのである。このシーズンのロッドマンのフリースロー成功率は55%。1本でも外せば、ジャズにも勝利の望みが繋がる重要なフリースローだった。そしてロッドマンはこのフリースローを2本とも決めてしまい、ジャズに引導を渡したのである。そのジャズはファウルゲームを挑むも、点差を縮めることはできず、ブルズが86-82で勝利を収めた。
ブルズはジョーダンが34得点8リバウンド、ピッペンが28得点9リバウンド、ロッドマンは14リバウンドを記録。ジャズはマローンが21得点14リバウンド、ストックトンは13アシストを記録した。
いよいよ2度目のスリーピートに王手を掛けたジョーダンは、試合後の会見で「今日は前菜に過ぎない。メインは金曜日(第5戦が行われる)だ」と語った
第5戦
ブルズは前回のスリーピートでもシカゴで優勝を祝うことができなかったが、そして今回もブルズは地元での優勝の機会を逃し、スタッフが用意していた優勝セレモニーの準備も無駄となった。
マローンは前年のファイナルでも重要な時に本来の実力を発揮できず、そしてこの年のファイナルでも第1戦、第2戦は不振に陥り、第4戦でもロッドマンに抑え込まれ、第4Qでは僅か3本のシュートしか打てなかった。クラッチタイムにおける消極的な姿勢への批判は、常にマローンに付き纏っていた。
しかしこの日のマローンは違った。FG17/27の39得点を記録し、ほぼ独力でブルズを粉砕してしまったのである。試合は終盤までもつれたが、逆転を狙ったジョーダンの3Pシュートは外れ、83-81でジャズが勝利し、ブルズのソルトレイクシティ行きが決定した。
ジャズはマローンの活躍のほか、ストックトンが次々とパスを供給して12アシストを記録した。ブルズはクーコッチが第1Qで独擅場の活躍を見せ30得点を記録、ジョーダンは28得点、ピッペンは11リバウンド11アシストを記録したが、マローンの気迫の前に屈した。
第6戦
地元での優勝を逃したブルズに悲運が襲った。ここまでファイナルMVP級の活躍でブルズを牽引してきたピッペンが、持病の腰痛を悪化させてしまったのである。ピッペンは鎮痛剤を打って第6戦に臨んだが、最初の7分間をプレイして以後はロッカールームに下がってしまい、前半終了までに戻ることができなかった。
ジャズにとってピッペン不在は絶好のチャンスであり、その弱みに付け込みたいところだったが、ブルズにはピッペンが居なくてもジョーダンが居た。ジョーダンは前半だけで23得点をあげる活躍で戦線を支え、前半を49-45の4点ビハインドで終えた。しかし前半の無理が祟り、ジョーダンは第3Qに入って失速。コートに復帰したピッペンも本来の調子を戻せず、精彩を欠いたが、この間はこの日ブルズでジョーダン以外に唯一二桁得点を記録したクーコッチが支えた。一方のジャズもブルズのオフェンスが空回りする間でも突き放す機会を見出せず、試合の行方は最後まで混沌とした。なお、この間にマローンとロッドマンの間でのお互いが絡み合って転倒し、その後立ち上がろうとしては転倒してしまうという珍場面が見られた。
ジリジリとした攻防が続くまま試合は83-83で並んだまま残り1分を切った。そして残り41.9秒にストックトンの放った3Pシュートが決まり、土壇場でジャズが貴重な3点のリードを奪う。この瞬間デルタ・センターの熱気は最高潮に達し、ジャズには逆転優勝の望みが生まれ、そしてブルズには過去に経験がないファイナル第7戦突入の可能性が出てきた。
そして残り40秒。この時間はこのシーズン限りをもって引退を示唆しているジョーダンの最後の40秒間となり、そしてNBA史上最高の選手の一人と謳われるジョーダンが、その支配力をソルトレイクシティの市民とテレビを通して世界中にまざまざと見せ付けた40秒間となった。
ジョーダンはまずブライオン・ラッセルとの1on1を制し、一気にゴール下まで切り込んで、アントワン・カーの上からレイアップを沈めた。86-85で残り37秒。ブルズにはジャズのオフェンスを止め、さらに得点しなければならなかった。ジャズの司令塔、ストックトンは当然のようにマローンにボールを入れた。マローンがロッドマンへのポストアップを開始しようとしたが、すぐさま背後から忍び寄ったジョーダンがマローンの手からボールをはたき落とした。ジョーダンはルーズボールを確保し、そしてフロントコートへと駆け上がった。舞台は整った。
ジョーダンをマークするのはラッセル。ペネトレイトを開始するジョーダンにラッセルはぴったりと付いてくるが、ジョーダンはクロスオーバーを挟んでラッセルを振り切ると、17フィートの位置からシュートを放った。振り切られたラッセルは勢い余ってコート上に転倒してしまい、すぐに立ち上がってブロックに行こうとするも、すでにボールはジョーダンの手から離れていた。ジョーダンのシュートは綺麗な放物線を描いてバスケットに収まり、残り5.2秒、ブルズは87-86の逆転を果たした。ジョーダンの"ラストショット"と呼ばれる有名なシュートであり、ジョーダンの"ザ・ショット伝説"完結の瞬間だった。
まだ5秒あるジャズは逆転を狙ってストックトンが3Pシュートを狙うもボールは無情にもリムに弾かれ、マローンらがリバウンドを争う間に試合終了のブザーが鳴り響いた。ブルズが6度目、NBA史上初となる2度目のスリーピートを達成した。
ブルズは決勝点を決めたジョーダンが45得点を記録。フィル・ジャクソンHCは前年のファイナル第5戦で、ジョーダンが食中毒に苦しみながらも38得点を記録したことを振り返り、「あの試合を上回る活躍をするのは無理だろうと思っていた。しかし今夜、彼はあれを上回った」とジョーダンの活躍を讃えた。シリーズ平均33.3得点を記録したジョーダンはファイナルMVPに選ばれ、これで3度目となる得点王、オールスターMVP、シーズンMVP、ファイナルMVPの四冠達成となった。
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